◆授業の様子◆
 
覚えている範囲なので,若干前後したり脚色したりしています。ドキュメンタリー風に・・・。
                                ※写真は意図的にぼかしているものもあります。

授業の目的を伝えた後,まず,絵の近くによってよく見てもらいました。
このときから,生徒同士の会話は始まってます。
「なんだこれ?」「顔が見える!」
「手もある!」「体どうなってるの?」
「ゴリラもいる?」「建物?」「なんかバラバラ?」
などなど。
でも,ここはあえて何も言わず,ただ,見させます。
ただ,男子が始め前を占領したために,女子が後ろから見づらそうだったので,
途中で,女子を前にして交替しました。

 

生徒を車座に座らせ,(このときは女子が前にいた)
「どんなものが見える?」「どんなことが起きてる?」というオーソドックスな投げかけから。
「ゴリラがいる!」
「どこ?どの部分がそう見えた?ここ?」(指し棒で指しながら)
「横顔も見える!手も見える!」「でも,指が4本しかないよ。」
「それは,ここかな?どうして4本?もう1本は?」
「丸いのがそうかな?」
「足もある。膝見たいのも見える。」
こんなやりとりで,しばらく見えたものについて出させました。
時には,生徒に指してもらったりしながら。(写真)
生徒は,中央部分に描かれているものが,気になるらしい。
やがて・・・
「山みたいのが見える。」
「山?そう。ここ,どんな場所だと思うかな?」
「山というより砂漠に見える。」
「どうして?」
「茶色っぽいから。」
「もう一度よく見てみよう。書いてあるものから分かることはないかな?」
と,振っては見たが,生徒は,以前書かれているものに興味があるようで・・・。


そこで,後ろに座っていた男子と前にいる女子を交替させた。
ちなみに,女子が意見を言っている間,男子は男子で,女子の意見に反応しつつ,
近くの友達と意見交換をしていた。(写真)


「男子はどう?また何か違うものが見えたのかな?」
「女の人が見える。」
「どこ?指してもらえる?」
左側のところに女性の姿を見いだした生徒がいた。
「他にも人がいる。」(別の生徒)
また,指してもらう。おそらくだれも気づかないようなところに見える
腕の隙間から見える影を女性の姿として捉えていた。
他にも女子で,うずくまる長い髪の女性像を発見した生徒がいた。
あちこち飛んでいくので,こちらからも聞いてみた。
「この辺りに描かれているものにまだ意見がないけれど(と,左下の部分を指しながら)・・・」
「これは,なんだと思う?K君どう?」

「壊れた建物に見える。」
「なるほど,この周りにあるのはなんだと思う?」
「飛び散った屋根だと思います。」
などと,男子と進めている間は,女子が後ろでいろいろ会話したり反応したり・・・。
途中で,絵を逆さまにして見てみたいという生徒がいたので,
面白そうなので,逆さまにしてみた。
すると,後ろから見ていた女子が
「怪物が見える」と言い出した。
説明させると,みんな
「よく見つけたね〜,すごい!」と賞賛。
ん?まずい。カタチ探しゲームになってしまっている。
軌道修正しないと!!(時間もないし・・・)

描かれているものの情報交換は十分だったので,いよいよ本題へ・・・。
「みんないろんなものを見つけたね。でも,どうして,そんなものを描いたんだろう?
人間を描くなら,リアルに普通に描いてもいいよね。どうしてこんな描き方をしたんだろう。」

ここから,急に静か〜になっていく・・・。考えている様子・・・・。
しまった,ちょっと1年生には難しかったか?そこで,用意していた質問。
作者の心情を考えさせるための質問をぶつけた。
「今回,あえて題名は言ってないけど,みんなだったらどんな題名を付ける?」
また,考えている・・・。
すると,すぐ手前にいる生徒がぼそっと
「ゴミ」
「他に思いついた人は?」
(顔を見合わせている。きっと考えた生徒もいるのだろうと思ったが・・・)
「U君,どうしてゴミって思ったのかな?」
「ごちゃごちゃしているから。」
「そうか,でも,ごちゃごちゃしているからゴミとは限らないよね。」
「ん〜,無造作に捨てられている感じがした。」
「なるほど,いい答えですね。そんな風に感じたんだ。」
しかし,なかなか他の意見が出ない・・・。すると,ある生徒・・・。
「先生,この絵ってだれが描いたんですか?」
「あ,ごめん,ごめん。すっかり言い忘れてたね。
この絵は,清水登之さんといって,栃木県・栃木市出身の作家さんです。」
(用意した紙を貼る。何人かから「へぇ〜」「ほぉ〜」と声が漏れる。)
「もう亡くなった方ですが・・・。というか,少し前の人かな。」
「いつ頃の人ですか?」
このとき,ハッとした。生徒が,なぜ急に名前や時代を気にしだしたのか。
生徒は,こちらの質問に対してなかなか答えが出せなかった。
つまり,質問に答えるために,絵画から読みとれる以外の情報も欲しかったのだと考えられないか。
「知りたいですか?(ほとんどうなずく)明治20年生まれ昭和20年没です。」(板書する)
「終戦だ!」
「うん,そうだね。よく知ってましたね。」
「え,いつ描かれたんですか?」
「昭和12年です。」

「題名は何ですか?」
「んん?それを聞いちゃうと,みんな同じ見方になっちゃうからなぁ・・・・」
「え〜,教えてください!」
「ん〜(迷ってる)」
「先生〜,僕たちにも知る権利はあるはずです。」
「あ,いや,権利とかの問題じゃないだろう。」(生徒・参観者から笑いが起きる)
「わかった,じゃあ,教える。今度は,題名からイメージ出来るかも知れないから。」
「題名は,戦蹟といいます。(板書する)」

「戦争かぁ。(何人かの生徒が)」
「じゃあ,やっぱりばらばらなんだ。」「建物は原爆ドーム?」
描かれたときにはまだ原爆は落ちてないんだけど・・・(歴史苦手クラス)と,
つっこみたくなったが,そのまま聞き流しました。
題名を言ったことで,あれこれ会話が始まっていたのですが,そろそろタイムアップ!
席に戻って作者の心情を考えながら,作品から感じ取れることを書いてもらいました。
(授業終了)

生徒の解釈は こちら

「授業評価の結果」及び授業研究会での意見・指導は こちら